2026/06/14 未分類
労働者派遣型育成就労の概要
技能実習に代わる新制度「育成就労」では、一定の分野で労働者派遣型の受入れが認められます。農業分野を念頭に、誰が派遣元になれるのか、人数枠はどう数えるのかを整理します。
※ 本記事は関係法令・規則の規定をもとにした制度解説です。実際の運用は分野別の運用要領・別冊により確定するため、最新の通知等をご確認ください。
1. 全体像 ── 派遣型は「監理型・共同実施」が大前提
労働者派遣型の育成就労は、必ず監理型で行う必要があります(単独型は不可)。派遣元・派遣先はいずれも育成就労実施者であり、育成就労計画を連名で共同作成・共同実施します。監理支援機関は派遣元・派遣先で同一でなければなりません。
形態は次の2類型に分かれます(法第2条第3号ロ)。
ロ⑴|派遣元+派遣先の両方で就労
派遣元の事業所でも、派遣先の事業所でも業務に従事させる形態です。就労先(派遣先)の数は1〜2者。人数枠は「派遣元と派遣先の個別人数枠のうち最小」で決まります。
ロ⑵|複数の派遣先のみで就労
派遣元の事業所では業務に従事させず、複数の派遣先でのみ就労させる形態です。就労先(派遣先)の数は2〜3者。人数枠は「派遣先の個別人数枠のうち最小」で決まり、派遣元の枠は適用されません。
いずれの形態でも、就労先は2者以上・最大3者です。1つの派遣先だけで就労させることはできません。
2. 派遣元になれる者 ── 認定要件
派遣元となるには、次の①(ア〜エのいずれか)に該当し、かつ②所管行政機関の長との協議で適当と認められることが必要です(規則第22条第2号)。
- ア:当該分野の業務、又はこれに関連する業務を行っている者
- イ:地方公共団体、又はアの者が資本金の過半数を出資している者
- ウ:地方公共団体の職員、またはアの者・その役職員が派遣元の役員であるなど、業務執行に実質的に関与している者
- エ:【農業分野】国家戦略特区農業支援外国人を受け入れている特定機関(国家戦略特区法16条の5第1項)
あわせて、次の3点も必要です。
- 労働者派遣法等の許可(許可だけでは不可。育成就労実施者の基準も別途充足が必要)
- 派遣元責任者の選任+派遣元責任者講習の受講(過去3年以内)
- 派遣元事業主等による誓約書の提出
3. 人数枠の考え方 ── 「個別人数枠 × 派遣単位の上限」の二層構造
① 個別人数枠
各育成就労実施者(派遣元・各派遣先)ごとに、通常と同じく規則第19条の表で算出した受入可能人数です。
② 派遣単位の上限
共同実施する「派遣元+派遣先」の組合せ=派遣単位全体で同時受入れできる上限です。形態(ロ⑴/ロ⑵)によって算定方法が変わります。
| 常勤職員数 | 1 | 2 | 3 | 9〜30 | 31〜40 | 51〜100 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 受入可能な外国人数 | 5 | 8 | 11 | 27 | 36 | 54 |
※ 通常枠(表2)では、例えば常勤3〜30人で9人、1人で3人。優良認定の有無で枠が大きく変わります。
4. 形態別の人数枠 ── 「効く枠」は形態で変わる
各実施者ごとに規則第19条で算出した個別人数枠を、形態に応じて当てはめます(派遣単位で合算はしません)。次の例で考えます。
派遣元X=3人、派遣先A=6人、派遣先B=9人 とした場合:
| 形態 | 計算式 | 受入上限 |
|---|---|---|
| ロ⑴(派遣元+派遣先) | min(3, 6, 9) | 3人 |
| ロ⑵(派遣先のみ) | min(6, 9) Xの3は無関係 |
6人 |
ロ⑵では派遣元Xの枠(3)は計算に入らず、派遣先A・Bのうち最小の6人が上限になります。
5. ロ⑵では、派遣元自身の人数枠は適用されない
「派遣元(たとえばJAなど)がロ⑵として複数の個人事業主(農家)へ派遣する場合、派遣元の人数枠はどうなるのか?」── 結論は次のとおりです。
ロ⑵では、派遣元自身の個別人数枠は適用されません。 派遣単位の上限は「派遣先(各農家)の個別人数枠のうち最小」だけで決まり、派遣元(例:JAなど)の枠は計算に入りません。
根拠①|派遣単位の算定
規則第24条は、ロ⑵の同時受入れ総数を「派遣先ごとの個別人数枠のうち最小の数」と定めています。派遣元の枠は明示的に算定対象外です。
根拠②|重複カウントの除外
規則第24条のただし書では、他にも育成就労を行う場合「個別人数枠を超えてはならない」とされますが、ロ⑵の派遣元はこの規定から明文で除外されています。多数の派遣単位を束ねても、派遣元自身の枠で頭打ちにはなりません。
では、派遣元を縛るものは何か。答えは「人数枠」ではなく「体制要件」です。
6. 派遣元の本当の制約 ── 体制要件(40分の1ルール)
規則第23条第1項第5号により、派遣元が同時に複数の外国人へ派遣型育成就労を行わせる場合、その業務に従事する常勤の役員・職員の数が「外国人数 ÷ 40(1未満は1)」を超えていることが求められます。
必要な常勤役職員数 > 受入れ外国人数 ÷ 40
「÷40」が1未満でも1として扱うため、実質的に最低2名が必要になります。
| 同時受入れ外国人数 | ÷40 | 必要な常勤役職員 |
|---|---|---|
| 1〜39人 | 1未満 → 1 | 2名以上 |
| 40人 | 1 | 2名以上 |
| 80人 | 2 | 3名以上 |
| 120人 | 3 | 4名以上 |
7. 派遣単位の組み方 ── 多数の派遣先は複数の単位に分ける
ロ⑵の派遣先は、1つの派遣単位あたり2〜3者までです。たとえば40の個人事業主へ派遣するなら、40者を1単位にはできず、おおむね2〜3者ずつの派遣単位を複数組成し、各外国人はその単位内の派遣先で就労します。
- 派遣単位ア:農家A・B
- 派遣単位イ:農家C・D・E
- 派遣単位ウ:農家F・G …(以降同様)
各派遣単位の上限は、それぞれ「その単位の派遣先の最小枠」で個別に判断します。また、原則3年間は同じ派遣元・派遣先の組合せを維持します(変更は転籍手続が必要)。
まとめ
- 派遣元になれる者:ア〜エのいずれか+協議。農業ではエ(特区特定機関)のほか、出資・関与によるイ・ウも検討余地。許可・誓約書・派遣元責任者講習も必須。
- ロ⑵の人数枠:派遣単位の上限は派遣先(農家)の最小枠のみで決まり、派遣元の個別人数枠は適用されない(規則24条本文・ただし書)。
- 派遣元の本当の制約:人数枠ではなく体制要件。派遣業務に従事する常勤役職員 > 外国人数÷40(実質最低2名)。受入規模に見合う体制が必要。
- 要確認:農業が労働者派遣型育成就労の対象分野に選定されているか、別冊の「関連業務」「実質的関与」「対象業務区分」を必ず確認すること。